シリーズでお送りしてきましたが、今回がいよいよ最終回です。工場見学の後、厚かましくもお昼をご馳走になり、伐採林を見に行く予定でしたがさらにわがままを言って町営住宅とスレート屋根の昔ながらの住宅も見せて頂くことになりました。
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町営住宅
住田町の町営住宅の町並みです。瓦屋根に杉の腰壁に漆喰の真壁という、なかなか立派な造りで、しかも平屋という贅沢さ。広さも十分あります。信じられないことに家賃は4万円程度と伺いました。自分が払っている家賃と比べてしまうと、ここに住んで毎月色々な所に遊びに行った方が(就職先と休みがあるかはともかく)はるかに良いかもしれないと考えてしまいました。住田町にはここ以外にも同じように町営住宅が並んでいるところが数箇所あり、町並みへの配慮具合が伺えました。
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屋号のある家
続いては古くからあるスレート屋根の家です。現在ではその金額の高さからあまり使われることの無いスレート屋根ですが、さすがに古いものは贅沢な使われ方をしていて重厚感たっぷりでした。棟に書いてある文字は屋号で、「日本桂の○○さん」などというように住所的感覚で使われていたようです。右の写真は畑仕事中に電話を知らせる装置で、見学していた最中にも一度鳴るのを聞くことが出来ました。
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全てはここから
そしていよいよ今回最後にして根源となる山へ。ガードレールも無く、舗装もされていない山道を車に揺られること数分でまさに伐採中の現場に到着しました。作業は3台の重機で行われており、山の下方から見上げた様は食事中の恐竜のようで、ジュラシックパークの1場面を思い起こさせるような景色でした。3台の重機はそれぞれ役割が異なり、切り倒された木を集めるもの、集まった枝を払い、余分な箇所を切り落とすもの、最後にトラックに積みやすくするものとなっています。意外だったのが、重機の各機能を満たすアタッチメント部が日本製ではなく、フィンランドやスロベニアの製品ということでした。林業に関しては日本は先進国ではないのです。写真ではわかりませんが、はるか上の方では一人の職人さんが木を切り倒しています。写真を撮っているところから30分くらいで登ってしまうようですが、早朝からお弁当を持って行って夕方まで一人で作業しています。見ていた時は、木の周りの草を払って、1本切り倒すまでにおよそ5?10分くらいだったように思えます。見難いですが、下の動画では木の枝を払う重機とその木を積み上げていく重機の連携の様子がわかると思います。
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香り立つ生木
上の写真は唐松の原木です。まだ皮の残る表面は、こんがり焼けたローストチキンのようで「おいしそう」という感じでした。
左は杉で、右が唐松の切断面です。ぱっと見でわかるように、杉の方が赤太と白太がハッキリしています。赤太の部分というのは木の初期に当たる部分で、まだ木として弱い頃のため、虫などが付きにくい成分が入っています。耐候性も強く外部で使用しても腐りにくいのですが、一般的に仕上げ材として好まれるのは白太のようです。
国産材の使用が推奨されるようになってきた昨今ではありますが、現場を見ると木の値段というのは安すぎるというのが実感です。木は50?80年というスパンで育てられ、道とも言えない様な道を大型トラックで入って行き、建設現場と比べても随分と危険な状態での作業を続けてやっと切り出される様子を見ると、「プレカット間違ってるからその梁取り替えて下さい」などとは簡単に言えなくなります。恐らくは、ほとんどの製造業はその発端から見ていくと末端価格は信じられないほど安いというものが多いのでしょう。その過程というのは格差社会によって成り立っている例が多いような気もします。しかしながら日本の林業となると物価が1/10の国での作業とは話が違い、作る側も使う側もそれなりの生活水準を保てなければいけないのだと思います。そこを政治による調整に頼るのか、自ら道を切り開けるかが今後の発展への分かれ道になるのかもしれません。私たち設計者に出来るのは、日本の材を日本で使うことによって価値が上がるという使い道を考えることだと思います。
最後になりますが、今回お世話になりました三陸木材の皆様、気仙地方森林組合の皆様、山大の皆様、そして松田林業の皆様、貴重な経験をさせて頂き、本当にありがとうございました。