オルセー美術館は、1900年の万博にあわせて駅兼ホテルとして、Victor Lalouxの設計により建設されました。収蔵されている作品は、2月革命のあった1848年から、第一次世界大戦が勃発した1914年までとはっきりしていて、ルーブル及びポンピドーと役割分担がなされています。この建物の特徴は、なんと言っても元駅ですので、(見も蓋もない言い方ですが)長いということでしょうか。この長いメインホールに、大胆に取られたガラスのアーチ天井が、他の美術館とは一線を画す方向性のある開放感を生み出していると思います。メインホールには多分彫刻しかないのですが、ここの彫刻を鑑賞するときには嫌でも背景となるガラスアーチが目に入り、背景の奥行き感が彫刻の迫力を増す役割を担っているようにも思えます。
メインホールの両脇は、それぞれ地上3階地下1階の展示室があるのですが、3階には食堂もあり、この食堂が非常に魅力的でした。住宅では朝日の差す食堂と言うのが良しとされていますが、この食堂のように日は差し込まずに明るく広々とした場所というのが実は朝食にはベストのように思えます。普通の住宅では無理な話です。
食堂を抜けると祝典の間という豪華な展示室があります。舞踏会でも行われそうな空間で、スケール感も大きく、何となくアリスの世界にでももぐりこんだような気分になります。朝一番で乗り込んだおかげか、誰もいない祝典の間を堪能できました。
実は今回、個人的には世界一なまめかしい水が描かれていると思っているアングルの『泉』を是非見てみたかったのですが何故か見忘れてしまいました。より有名な作品たちに気を取られてしまったようです。この美術館のシンボルでもあるのでしょうが、この大時計がいつも目に入るため、どうしても時間が気になってしまったのも一つの原因だったかもしれません。訪れる際には時間を気にしないで良いくらいの余裕を持って行動されることをお勧めします。