前回のブログで取り上げた自冶会館の増改修工事前の古い写真です。この建物は1977年、設計事務所を独立した年の設計です。他所の団地の集会施設は建て替えられたものが多く、この建物も増築か建て替えかで大分検討されたようです。最終的に増改修でよいとなったようで、設計者としてはうれしい限りです。
三十数年前に設計した建築との対面は、若い時の恋人に会うような気恥ずかしいというか、こそばがゆいものがあるものです。よくもまあこれまで頑張って建ち続けてくれたという感慨と、もうちょっと何とかできなかったのかというような気持ちが混在しています。
当時ミースと言う有名な建築家にあこがれていたせいか、その影響がもろに現れた建築になっていて、建物への当時の想い入れが改めて思い出されます。
構造は空間をできるだけ自由に使えるようにと、内部が柱なしのオープンな鉄骨造の平屋建てです。筋交いのような倒れにくくする仕掛けは建物前後に配した、費用のかからないコンクリートブロック造の収納や厨房及び洗面所で支えています。屋根は折板のフラットルーフで、庇を周辺に2mほど跳ねだしていて、それが使用勝手も、メンテナンス上もかなり良かったようです。
内部もスライデイングウォールで間仕切り可能になっていて、外部採光の取れないところは水平ブラインド付きのトップライトにしていて、独立したてとしては良く考えられているところも少なくありません。当時一緒にやっていた構造設計者や工事関係者が手馴れていた人たちだったせいか、素直に意見を聞き、あまり我を出さずに進めたためうまくいったのかもしれません。
増改修工事をしていく中で、古い部分の対処に苦しむ所が生じても、既存建物のせいにする訳にはいかず、現場監督も、にやっと笑いながら相談してくることもありました。当時の自分の未熟さを思い知る事もある反面、やはり作り手の思い入れと素直さが、愛され続ける建築にしてくれたのかもという気がしました。下が増改修後の写真です。初心を踏襲しています。成長してないかも。