このシリーズも残すところ2回となりました。今回はノートルダム大聖堂(ノートルダム寺院)です。初期ゴシック建築の最高峰とも言われるこの建物は12世紀後半に着工し、竣工は1345年です。正面からはフライングバットレスが見えないものの、裏面はバットレスが放射状に広がり、おどろおどろしいほどの様相を呈しております。スパイダーとの異名も付いているようです。
ゴシック建築といえば、この写真のような交差リブヴォールトです。これが外観にもたらす尖塔上の形状から耽美系のビジュアル要素としてしばしば使われますが、実は「様の美」と呼ぶにふさわしい、必要性に迫られて開発された形状なのです。簡単に言うと、交差リブヴォールトによってそれまでのロマネスク建築に比べ平面形状と高さに自由度が生まれたのです。ヴォールトについて詳しくはWikipediaなんかを参照してください。
内部は大聖堂なので当たり前ながら椅子が並んでいます。教会の椅子といえば木製のベンチが定番ですが、ここの椅子は籐編み座面の比較的座り心地のよいものでした。建物に関係ありませんが、これに座ってのんびり周りを眺めるのもなかなか乙でした。
そして、忘れてはいけないのがステンドグラスです。有名なのは円形のバラ窓ですが、それ以外にも無数に(と感じるくらい)あり、どれもが独特の要素を持っているため見ていて飽きません。実は私はそれほどステンドグラスに興味が無いのですがそれでも見惚れてしまったくらいなので、好きな方が見ればステンドグラス見物だけで一日過ごせるのではないでしょうか。
中央付近の首を持っている聖人はサン・ドニだと思われます。ゴシック建築の装飾は基本的に聖人ベースで、ただの飾りではありません。が、ここの彫刻は実は竣工時には無く、18世紀のゴシックリヴァイバルの時期に施されたものです。ユーゴーの小説「パリのノートルダム」もこの時期です。最近の町屋ブームと似たようなものだったのかもしれません。
ノートルダムといえばユーゴーの小説をベースにしたディズニーの「ノートルダムの鐘」が有名ですが、案の定建物前の広場にはかなりリアルにせむし男の扮装をしたパフォーマーがおりました。また、ここはナポレオンの戴冠式が行われた場所でもあります。さらにいえばパリからの距離を示す際の基準点でもあります。正直、今回の旅程の中では地味な印象を持っていたのですが、なかなかどうして面白みのある場所でした。時間があれば塔に登ってみたかったのですが、何せ過密スケジュールだったので断念せざるを得ませんでした。階段に恐れをなしたわけはありません。