無農薬栽培は他の作物では可能でも、りんごは不可能だ。これはりんごを栽培している人の常識だそうです。ところがそれを可能にした人の本です。『りんごが教えてくれたこと』木村秋則著(日本経済新聞出版社)
10年りんごの無農薬栽培を色々試みて、どうしても虫で葉が落ちてしまい、できなく、破産者にまでなり、山で死んでお詫びしようというところまでいった方の話です。その山で首を吊るロープを木に投げたら勢いあまって飛んで行き、その木を見上げたら、りんごが成っているように見え、その木の見事な枝振りと繁った葉に、農薬を使ってないのにどうしてこれほどの葉をつけるのか、と下を見て、足元のかぐわしい土の匂いに、これが答えだと直感したといいます。
木の下の土は雑草が生え放題、伸び放題、地面は足が沈むほどふかふかしていて、土が違うということに気が付いたというのです。それまで木の上のことしか見ておらず、雑草は敵だとばっかり思い込んでいたが、それが逆だったことに気がつたというのです。山では落ち葉や枯れ枝が朽ち、それを微生物が分解して土を作っている。それを応用して、雑草を刈るのをやめ、その草が伸びた頃、りんごの葉が落ちなくなったというのです。夏にもその雑草が土を乾燥から守り、水をやる必要もなかったそうです。
本の紹介するつもりではなかったので詳しくは自分でお読みください。有機野菜の危険性についても書かれています。その中で特に共感させられたのは、生産性追及の農業が農薬や肥料の多投下を促し、効率に血道をあげてきた。その結果減反の必要を生み出した。
りんご1万円の売り上げに、肥料、農薬、機械に7000円かける農業と、5000円の売り上げに1000円以下の経費ですむ自然栽培の農業とどちらがいいのかと、問うています。
また日本経済を樹木になぞらえ、中央の幹(首都)があって枝(地方)が伸びているのではなく、小枝の葉っぱがでんぷんを作り、幹を支えているのだといいます。
これまで自分も十数年ほど森林(林業)のあり様に関心があって、木材を大量かつ多様に活用しきる工法をものにしたいと苦心してきました。これまでの木造とはまったく異なるもので、最初は先ず工法として成り立たせることに苦労し、3,4年かかり、木材(集成材)だけで60分準耐火構造壁を可能とする認定を取得しました。そのつぎにその木材が解体や部分交換でき、容易に間取りを変えられる工法とするためにまた苦心しています。それもやはり60分の準耐火の認定を取れるところまでこぎつけました。今その工法を誰もが容易に使用できるように、建築センターで構造評定を取れないか苦闘しています。さらに今後、乾燥と接着材にエネルギーをかけざるを得ない今の木造や集成材造を、天然乾燥した単なる板と板を木で結合た極めて自然な壁材や柱材でその工法ができないか考え始めています。そんなこともあり、自然栽培しようとする苦労や森の話などで共感するところが多く、ついこの本のことを取り上げたくなり、ブログで書いてしまいました。