困難な建築条件を含む厄介な仕事

十数年前に設計したある山中の週末住宅です。敷地は平坦なところがなく、雨が続くと小川ができてしまうこともあるところで、造成工事をすると建物以上の費用を要する場所でした。

私どもに依頼される仕事は他所ではできない、というか、やりたがらない、またはうまくできないということで来られるケースが多い、と最近気付きました。

その困難さは設計はもちろんですが、設計以前に可能な事業かどうかの検討という、プロデュースに属するような場合も少なくありません。例えば市街化調整区域などでの開発行為まで含む依頼とか、容積率や建蔽率上無理な床面積条件や極めて困難な増築、安全性を確認できない擁壁のある崖地とか、法的に難しく単純には進められないケースです。あるいはそれなりの居住条件を満たすのに技術的に困難な建築条件、まともには建てられそうに無い崖地や変形等の敷地、等々一筋縄では行かない依頼が多かったような気がします。

ただ、厄介かどうかは、実は受けた者の仕事への認識如何で違ってきます。依頼の条件をクリアーするだけなら、法と予算との戦いで、それほど厄介ではありません。しかし条件内の理想の最適解を追求しようとする性癖を持つ設計者には、条件範囲も超えて事業のあり方やプロデュースまで踏み込み、厄介にしてしまうところがあります。むしろ厳しい条件の依頼は選択範囲が限られ、その分容易になります。ところが恵まれた条件の場合、可能性が広がり、その中での最適解を求めようとすると、選択肢が無限になり、途端に苦しみます。結局選択の決め手は依頼者の意向と、失敗も含めた自分の経験からくる哲学、つまり価値観に拠るところとなります。すると、あらゆる選択の機会に、その都度本当にそれが適切なのか?と、理想を求めるもう一人の自分が囁いてきます。つまり自分で自分の仕事を厄介なものにしてしまうようなところもあります。

そこで何が厄介にさせたのか、次回以降、過去の事例からいくつか紹介してみようと思います。最初は今回のトップ写真のウイークエンドハウスです。