先日イーロンマスクが火星への移住、という困難な事業に挑むようなこと言っていました。改めて困難な事業とは何だろうと考えてみました。もしかしたら火星への移住技術より、地球で温暖化を止めて自然環境も損なわず、世界中の人々が戦争などせず、格差なく幸せに暮らせる仕組みを確立する方が、はるかに難しく価値があるのでは、と考えてしまいました。私達もその日々の暮らしを、争いなく快適に過ごせるため、何がどう必要か、様々な工夫と適切な選択や解答を探すという、これはこれで一つの難しさを持った仕事として考えています。
一不二異亭(アンフィニティー)も都内のマンションで暮らす家族がリフレッシュのために、週末を自然環境の豊かな山中で過ごせる家を、という依頼でした。二地域居住の先駆けの方でした。敷地は平坦な部分は殆どなく、真ん中が時々小川になってしまう傾斜のあるような所でした。建築条件は予算を2千万円程度で、ということで、それはそれなりに厄介ではありましたが何とかなる条件でした。もう一つの条件に設計者の代表作になる建築に、ということで、こちらの方がはるかにハードル高い条件で、それで最初に提案したのが下の配置図と断面図です。
敷地に平らなところがなく、造成しようとすると、それだけで予算がなくなってしまいます。そこで、接地面積の小さい建築ということで提案したもので、下がその案の平面図です。
この案に対して依頼者は、「設計者の代表作になりますか?」と尋ねてきました。じっと考えて、設計者としては作ってみたい面白い案ではありました。しかし確かに予算条件には適切ではあるが、中身に代表作と言えるほどの独創性があるかと問われたら、これまでの手法の組み合わせと言わざるを得ませんでした。何より建築面積が狭いため、伸びやかさに欠けるところがあり、都内のマンションの閉そく性が縦に伸びただけと思われるところがあり、リフレッシュのための空間をといわれると、改めて提案せざるを得なくなりました。
それで再度提案したのが下の写真の建物です。
これは上の基礎断面図のように、レベルの違う4か所にコンクリートの箱状の柱脚を作り基礎とし、その上に橋を架けるように建物を載せ、建物の土台と桁を、木片チップで固められたOSB合板で一体化したトラスの構造体として建築しています。
屋根はOMソーラーのように、太陽熱で温め、その空気を床下から吹き出し、部屋全体を暖め、内部を正圧にして外に隙間から吹き出し、常に室内空気を暖め新鮮な状態にしておく装置を設け、別荘特有の湿気を無くした空間にしています。
山中のため軒樋は木の葉が詰まるので設けていません。屋根から雨が落ちている様も悪くはないものです。浴室はハーフユニットながら、林の中に突き出し、三方を開放感のあるガラス窓にして、露天風呂のような空間にしています。詳しくは設計事例の一不異二亭(アンフィニティー)も参照ください。(藤原)