はじめに
最近、設計者仲間と 移住 研究会と称する集まりを重ねていて、そこでの話から、このタイトルのブログを始めてみようかと思いつきました。
「 移住 」は、移り住む、と書きます。そう考えると子供にとっての一時期、何らかの理由で祖父母の所で暮らすということも移住と考えることができます。そのように移住を広く捉えると、移る先の住まいも、通常の住宅だけでなく、寄宿舎、社宅、二世帯住宅、アパート、別荘、災害用仮設住宅、老人ホーム等、多岐に渡り、さらに生活形態も居候、下宿、病気療養での入院、車上生活、海外移住、移民、ホスピス等、多種多様です。人員の構成も、単身者世帯、シェアハウス、グループホームなど多様な人員で構成される形態も多くなってきました。移動距離も、交通機関の発達で距離感が薄れ、ハードルは低くなり、単なる転居と大差なくなり、かつてのような深刻さはなく、その数も頻度も増え、社会が流動化していることが改めて気づかされます。
このように多様な移住形態の社会では、住まいや暮らしのあり様を考える際、移住の一歩手前の、仮り住まい的な別荘、或いはリフレッシュのためのセカンドハウスを見てみると多くの示唆を与えてくれます。それは別荘を必要とする動機が状況や人それぞれで異なっていて、期待するものも違っており、考えるヒントが多く散見されるからです。
例えば、自分の身の立て方や生き方を探して試行錯誤する、結婚前後の二、三十代には、多様な社会を体験出来る、会員制の別荘を、また、自然の中で子供を遊ばせ、自分も趣味を満喫させたい子育て世代は、変化に対応し易く基地的使い方のできる別荘を、そして仕事は安定するも、忙しさが日常化し、ストレスが溜まり、リフレッシュする空間と時間が欲しい仕事中毒の世代には、非日常的な別荘を、今の仕事や生き方を変えて、次のステップやUターンJターンを考える壮年期世代には、目標に対応した別荘を、定年後を視野に、終活までを考える熟年世代には、癒され、使い易い終の棲家にもなる別荘を、等々のように、世代や状況で要望する内容が違ってきそうです。
このように、求める内容が世代や状況で大きく異なることから、「住む」ということは、もはや一様に捉えられないことが分かります。設計者は住まいを考える際、将来のあらゆる事態を想定した理想像から、その時の状況を優先した「住まい」や「暮らし方」を考えようとします。しかし理想像も、建築の仕方も時代により変化します。その時考える住まいだけで変化に対応しようとするより、空き家も増大していく社会にあっては、その活用も踏まえ、移住や転売も視野に入れて考える時代になっている気がします。そこで、その世代や状況によって求めるものが一様ではなかった別荘の変遷の“笑例”に、殆どが20代の独身だった21人が始めた、「峠の我が家」というシェア別荘とその仲間づくり及びそこでの体験の顛末を、反面教師的ですが、振り返って考えてみようと思います。そのために移住することになったきっかけや動機、そこに至る若い頃の心理的経緯も含めて、これから二拠点居住を考えている方にはもちろん、これから就職や自立し、自己を確立しようとする時期の若い方や、何となくもう少し違った暮らし方や働き方があるのでは、という疑問をもち始めてきた方々の、居住の参考になれば幸いです。
以前ブログで取り上げた家庭内キャンプも盛んのようです。
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