目下建設中の「 釜石の家 」はFSU工法(過去の設計事例はこちら)で杉の木をふんだんに使用した一人暮らしの建て主のための平屋の住宅です。建て主は現在名古屋に住んでおり、リタイヤ後の生活を、自然豊かで生まれ育った故郷に近い街で過ごしたいという考えで結設計と一緒に土地探しからお付き合いさせていただき、この地に計画することになりました。
建て主さんは住まい方には具体的なイメージを持っており、災害に備えられる強い住宅、自然エネルギーを使って電気代やガス代など維持費を抑えることが希望でしたので、太陽光発電、太陽熱給湯のソーラーパネルを南に向いた切り妻屋根に載せる計画としています。
梅雨の合間の6月に上棟し(←前回ブログ参照)、ガルバリウム鋼板の屋根が葺かれ、開口部にはサッシが入り、だんだんと家の体をなしてきました。
ご覧のとおり居室は陽当たりのいい南側に配置されていますが、一部、奥まっていて光が届かない箇所があり、北側の屋根にトップライトを設置しています。雪の多い地域ではトップライトの上部に通称「ジャンプ台」と呼ばれる積雪対策を施工します。あたかもジャンプ台のような急勾配を付けてトップライトの上部や周辺部に降り積もった雪が溜まらないようにするのです。(参考:日本ベルックス 積雪用鋼板横葺き施工参考例)
今回は、施工者の方の経験から両脇に雪が流れるような形状に板金を製作していただきました。岩手の中でも特に雪深い遠野市の施工者ならではの配慮です。雪対策だけでなく頂部から流れてきた雨水もトップライトにかからずに流れやすくなっています。
トップライト直下はキッチン、水回りスペースに続く通路になります。北側からの光は直射日光のように強烈ではなく明るく安定していますので、日中は照明だけに頼らない明るさをもたらし、省エネにも寄与してくれそうです。
今回の現場では電気、設備の施工者の方たちとも打ち合わせをしました。FSU工法の配線や配管工事は、同じ木造の在来工法と違って内装が構造材が現しになるこの工法ならでは難しさがあります。それらを計画的にうまく隠す必要があるのですが、そこをよく理解していただけて施工されていました。
また、設計段階で分電盤の位置などから ここが最適だろう と指定していた電気の引き込み位置では、道路上で電線が横断するため規定の高さが取れず、位置を変更することにしました。(参考:東京電力 引込線地上高および離隔について)
私たちの事務所から「 釜石の家 」までは遠く、現場まで片道6時間かけて工事監理に行きますが、そのたびに得るものや気づきがあります。待ち遠しい完成までは、あと2か月程度です。