情熱を注いで建て、大事にしてきた住まいも、社会事情で売却を考える時が来る場合があります。その時の注意に、日本の中古住宅市場は、希望価格で売りに出しても、数カ月経って、仲介事業者の善意からでしょうが、その価格ではに売れそうにないけどどうしますか、と値下げを迫られ、建物の個性関係なく、通常査定の築年数で価格設定される場合がよくあります。それは建て主だけでなく設計者としても耐え難いものです。そんな流れに掉さし、建物を専門の設計者の立場から個別に価値評価され、それを気に入ってくれる方に、その度合いに合わせた価格で買って頂き、価値ある建築が安易に解体されず、引き継がれていく文化を大事にしたい方のために、建築ヴィンテージ化の支援をしています。
ヴィンテージ化を考えさせる、流通業界の構造背景
中古建物の評価は建築の本質的価値からではなく、経済的流動性が評価基準になっています。今日、家の古さは、仲介不動産の査定では減価償却の観点から、マイナスに評価され、売主さんが注文を付けない限り、20年ぐらいでゼロ評価されがちです。そのため市場では価値ある古い家も、建築価値は雀の涙ほどに査定され、殆ど土地価格で売りに出される場合が多いです。その背景に、仲介者は自社の情報網だけで購入者を探しと、売買価格の6%の手数料が入り、他の仲介者からの紹介だと、3%になります。できる限り自社の情報網だけで探しだそうとします。希望価格が高いと、数カ月探したけど、その価格では売れないかったけどどうしますか、と暗に値下げを促します。価格が下がると手数料も下がるので下げたくないけど、売れるためには仕方ないと、結局売値を下げることなります。その上で早く売却するために、という理由で知っている建築事業者に売却します。建築事業者は安く購入できれば、既存建物を解体廃棄の上、新築の建売物件にしますが、購入資金を早く回収したい場合、リフォームをした上でリノベーション物件として、その仲介者に新築の相場よりわずかに安い価格で、再度売りに出します。建築事業者はリスクを負って資金投入するので、早く回収しようと、売れなければやはり、値下げしてでも売ってしまいします。結果、仲介(流通)事業者は同じ物件で手数料を二回分の12%を得ることが可能な収益構造のビジネスモデルで運営していることになります。この手法はマンションの中古販売でもよくあることで、仲介者でない人までその収益構造に素人のママ友紹介者として介在し、その流通構造のなかでビジネス化されている状況です
リフォーム工事も、漏水対策と新しく見せるための対処はしますが、見えない断熱や気密遮音及び構造や対候性能等の向上は、販売価格を上げて売りにくくするだけなので、新築のように厳密な法的チェックは入る訳でもなく、またそれを気にする者も注視する者もいませんから、仲介者のいうがままの収益構造に乘るしかありません。このように各業界はその業界なりに、資本主義社会の法には触れない範囲で工夫し、何とか市場で収益を出そうとしているだけで、どこにも悪い人はいません。しかし、この背景構造が、古い残したい良い建築は消されるか、見えるところだけ新しく見せ、本質的建築の中身はなおざなりにされ、建物や社会を望ましくない,寂しい方向に導く作用をしています。いい建築創りに関わった、或いは関わりたいと思う建築従事者の努力は今の世の流通事情だからと諦め、事業者の収益が優先する構造に気づかず放置することは、設計者としてはあまりに情けなく、抗い、中古建物といえども建築的価値の高い建物は残していくための支援はしていきたいと思います。
そのために、売却しようとされる方は下記のことを注意して進めるようにしてください。
- 建物評価は築年数査定ではなく、売り手の希望価格で焦らない売り方をしてください。
- 売却は実際の建物を見て良しあしを判断して頂く売り方にしてください。
- 売却情報はスーモやレインズ等全国版サイトに掲載し、打診者情報は全て頂くようにします。
- リフォームされる場合、必要なら設計監理で各種性能の向上を図る支援もいたします。
- 仲介者に掲載して頂く写真は納得できる適切な写真にし、必要ならアドバイスもします。
- 必要なら私どものホームページでブログで応援も可能です。
- 結設計の事例の場合、建築時初期の写真も掲載できます。
- 見ていただく際の建物の特徴と良さを具体的にアピールできる資料を用意してからみせます。
- 購入希望者に見せる際は内部、外部を片付け整え、きれいに掃除にして見せるようにします。
- 購入者が住宅のローンを活用する方の場合は減価償却を参考にされ、全額借入は難しいです。
- 売却する住宅を同じ仕様設備で現在建築した場合の概算費用も必要なら参考に用意します。
詳しいことはメール等でお尋ねください。
事業化の経緯はブログ「地域に馴染んだ建物が解体され一念発起 |」を参照ください。
以下、築年数関係なく建築当時の工事価格前後で売却できた私どもの設計事例
これら以外にもいくつかあると予想されますが、関係者より情報あった建物のみ掲載しています。
高価に売却する方には私どもは次のようなことを心掛けて頂いています。
- 建物評価を仲介者任せにせず、共に高価に売る工夫と努力をお願いします。
- 仲介者に聞く価格は必ず、確実に売却できる価格又は買取価格を聞いて下さい。
- 仲介者に掲載して頂く写真は相談しながら適切な写真を一緒に考えます。
- 購入希望者に現況建物を見せるのは、対策前ではなく対策後にお願いします。
- 購入希望者に見せる前に内部、外部を整え、評価ポイントを明確にしてから見せることを原則にしています。
- 購入者が住宅のローンを活用する場合は減価償却を参考にされることが多く、高く買っていただける場合、全額借入は難しいことが多いです。
- 募集の際、結設計の事例の場合、建築時初期の写真も掲載できます。
- 売却する住宅を同じ仕様設備で現在建築した場合の概算費用も必要なら参考に用意します。