押し売りの詐欺まがい工事がすぐ身近でされている

建築の改修工事の押し売り詐欺的被害の話をよく聞きますが、他人事のように思っていました。ところが身近の方がその被害合う寸前に遭遇しました。

整然としていてどこがおかしいのか全く分からない瓦屋根

ある日、「近くで建築の工事をしている者ですが、お宅の屋根瓦の状態がおかしいので、梅雨が近いから雨漏りするといけないから見てあげましょうか。」と話しかけられ、その方は、「そうですか親切にどうもありがとう、じゃお願いします。」と言ったら、はしごをトラックから取り出して、屋根に上って見てくれたとのことです。数分屋根を見回り、降りて来て、「大分ひどい状態ですね。どんな状態か、見せましょう」と言い、スマホで撮った屋根の詳細写真をみせ、梅雨が近いから、直ぐ直した方がいいですよ」と言われたとのことです。その写真見てもどこがいけないのかよく分からなかったけど、確かに梅雨が近いし、雨漏りされたら困るなあ、と思っていたら、「直すのにどれくらいかかるか見積もってあげましょうか」といわれ、「おねがいします」とその方は応えたら、その場で修理箇所を書き連ね、すぐ見積ってくれたようです。

瓦を詳細に見てもおかしなところは見当たらない

「梅雨が来るから早く直さないと大変なことになりますよ、瓦だと取り寄せるのに日数かかかるから、明日またくるからどうするか決めておいてくれますか。」と言って帰って行ったとのことでした。その方も、見積書の内容を確かめず、確かに梅雨が来て雨漏りしたらいやだから、直してしまおうと思ったようです。翌日、書類を持ってきて、「今日ハンコ押してくれたるから、梅雨前に瓦が入荷でき、何とか間に合いますよ、直ぐ直してあげますから。」と言われハンコを押したとのことでした。

たまたま、自分の家族らがその方から、「どうもハクビシンが夜中家の中で動いている音がする。」という話題で相談を受けて話をしているとき、「屋根がおかしくなっている、と言われたけど、おたくのご主人、建築屋さんだから、ちょっと見てもらえないかしら」といわれ、「帰宅したら話しておきます。」と家族が答え、その晩家族に「明日見てあげて」と言われたので、翌日土曜日自分が訪ねて、屋根を見ながら、どこがおかしいか聞いたら、「紙を置いて行ったの」と書類を見せてくれました。

確かその家は、7,8年前に瓦の葺き替えを160万円ほどでしていたのを、知っていて、十年保証が効いているはずだけど、と思いながら、その紙を見たところ、それは向こうには落ち度がない工事請負契約書の体をなしていました。税込み280万円の契約書で、決して詐欺ではない形式になっていました。

自分の経験からして、200万円も掛らないと思われる工事内容でした。工事屋さんの住所は、よその県で、だいぶ遠く、簡単には聞きにいけない住所です。キャンセルの仕方まで丁寧に書いてあり、電話で問い合わせしようとしたら、その日は土曜日で、電話が通じません。発注書にはクーリング・オフは8日以内に書留ハガキでないと無効です、と書かれています。契約書にハンコ押した日付が、一週間前の金曜日で、明後日の月曜日、電話で断ろうとしても、たぶん、8日以上過ぎていて、ハガキが来なかったので、もう瓦を発注しました、と言うだろうと思われます。仮にキャンセルできても、瓦は発注したのでその分は頂きたいと、と言われることは予測されます。キャンセルは今日しかありません。

ハンコを押したその方からは、時々ハーブを頂き、その育て方まで教わるなど親しくさせている、人のいいおばちゃんでした。押し売りを企んで仕掛けてきたのは、年寄りだからと、何でもない写真をみせて、色々理屈をこじつけて不安をあおり、サインさせ、ハンコを押させたと思われます。しょうがない、自分も建築の業界に置く身、普段世話になっている方に迷惑をかけさせるわけにはいかない。何とか回避すべく、ハガキを用意し、キャンセルの必要事項を記載し、その方に一緒に行きましょう、と車を用意し、土曜日でも空いている中央郵便局までいき、書留にしてもらい、8日以内の消印を押したハガキのコピーを局員の方からいただき、何とか被害を免れることができました。

ちゃんと法に則ってる証拠にクーリングオフ見本もある

どうやら、工事の押し売りでは、声を掛け専門の者が歩き回り、必要もない工事を進めて施工し、200万円以下の工事に280万円の見積もりで、紹介マージンを稼いでいると思われます。だから後からクレームを言いにくい、遠く離れた工事屋さんを施工者にした契約書を持ち歩いているようです。手続き上は、消費者センター等に問い合わせても何の問題もないやり方になっています。昔は床下の土台が腐っているので換気扇を、という詐欺もありましたが、今は屋根だけでなく、外壁塗装や給湯機の取り換え工事等の押し売りも多いようです。

この押し売りのからくりは、雨漏りする前に対処した方が良いでしょう、親切でやっているんですよ、という論理です。やってはいけない工事ではなく、ちゃんとした施工さえするなら、少しは新しくなるので、やらないよりやった方がいい、という理屈が成り立ちます。仮に今回のような状況に、親しくない人だったら、自分が屋根葺き替え工事なんかやる必要ないですよ、と言っても、もし梅雨時に雨漏りしたら、どうしてくれるんですか?と言われるかもしれません。そう思うと詐欺まがいの工事をする方に錦の御旗が翻ってしまい、私の様な意見は非難されることになります。

詐欺まがいではないですが、これと似た理屈が、マンションの定期的大規模修繕工事にもあります。防水工事の保証期間が過ぎたから、やりましょうということで、マンション管理会社から奨められ、10年から15年程度でやっているマンションが殆どだろうと思います。自分のように未だ大丈夫ですよ、と言おうものなら、居住者の方から避難の眼差しで見られます。少なくとも私が親しく関与している理事会のマンションの2軒は、定期的に打検診断を行い、防水状況や外壁症状をつぶさに見て、鉄骨階段等小修理すべきところは早めに修理し、大規模修繕は20年以上経ってからやっていて、何ら問題ありません。人間も家もマンションも、個体差や箇所に症状差があり、一概に決めつけてやるべきではなく、何をいつすべきかは体や建物の症状をよく見極めて、適切な手を打つべきと思っています。

横道にそれましたが、各地で必要のない建築の押し売り修理工事が、詐欺まがいに横行しているよです。皆さん、よそ事じゃないです、くれぐれも気を付けて下さいね。