2日目の朝、幸いにも天気は晴れ、絶好の見学日和となりました。最初に向かうのは三陸木材高次加工協同組合(以下、三陸木材と略させて頂きます)です。今回、とある助成金の申請のため打ち合わせの場を設けて頂き、三陸木材のほか、気仙地方森林組合と株式会社山大からも数名ずつ参加して頂けました。打ち合わせの後、集成材の製作工場の見学をさせて頂きました。
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皮剥き
最初はやはり材木の皮を剥くところから始まります。山大でも同じような機械を見ましたが、背景に山がそびえていると一風違った趣があり、海でウニを採ってきてその場で食べるような、妙に生々しい感じがしました。
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木取り
剥かれた原木は径によって最善の木取りがされます。スピードは非常に速く、まるで刺身を切っているようです。鋸で木を切ったことのある方ならそのスムーズな動きに驚かれることでしょう。集成材用に木取られた材はラミナと呼ばれます。
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乾燥
ラミナは長さごとで揃えられ、仕分けされて乾燥釜に入れられます。ここで数日に渡り蒸気と熱で材が割れないように乾燥されます。ラミナは比較的断面が小さいため乾燥にかかる日数は少なめですが、それでも3.5日ほど釜の中に入っています。
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捨てるところはありません
最初に剥かれた皮は天日で乾燥され燃料として使われます。ここで生成されたエネルギーはこの加工工場のみならず、近隣のプレカット工場などにも売られます。
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長くするために
集成材は一般的には最長で6m弱となりますが、ラミナ1枚の長さはもっと短いため、継ぐ必要があります。構造用集成材ではしっかりした強度の出るフィンガージョイントという継ぎ方をします。この写真はイソシアネート系の接着剤で外部使用には向きませんが乾くと透明になるため目立ちません。下の動画では、ラミナは並べられ、横に移動する時にギザギザのカットと接着剤の塗布がなされます。今更ですが、オートメーションという言葉がピッタリな動きだと感じました。
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加熱接着
構造用集成材の接着は過熱しながらの圧着となります。従来であれば丸1日以上かかるのですが、レゾルシノール系接着剤の場合はマイクロウェーブによる加熱圧着(要は電子レンジ)で何と5分で完成します。写真左は加熱中、右は終了して出てくるところです。下の写真はイソシアネート系の集成材を加熱圧着する機械で、これは従来の時間がかかるタイプです。
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接着完了
接着が完了した集成材です。左の黒っぽいのがレゾルシノール系接着剤、右の白っぽいのがイソシアネート系接着剤です。この状態ではまだ表面ががたがたなので、最後に下の写真の機械で表面を削って規定の寸法に仕上げます。
集成材が出来上がる様子が良くわかって頂けたと思います。これだけ手間をかけて作られた集成材パネルですが、DEWS工法で多く使われる巾45cm、厚さ12cm、長さ5mの壁パネル1本当たりの加工前の単価は2万円弱です。工程を見るともう少し高くても良さそうに思えますが、市場で値段が決まってそれに合わせるしかないというのが現状です。価格を上げるには価値を上げるしかなく、価値というのは、どれだけ手間がかかったかということだけではなかなか上がるものではありません。せめて少しでも価値を上げることに貢献できる設計をしなければならないと強く感じた次第でした。