日本人の多くの方は和室にいると、落ち着き馴染むと言われます。整然とした床の間に掛け軸でもあると何となく、丸まった背をしゃんとしたくなる方も多いかと思われます。
数百年続いて洗練され、磨き上げられてきた和室は、日本人の体にしみ込んでいるからでしょうか。海外の方が真似して作った和室や床の間を見せていただくと、どことなく違和感を覚えるのもそのためと思います。
しかし今日の家づくりでは、和室は不要ですと言われる方も少なくありません。長い年月、和室の中で過ごすうちに、無用の長物というかあまりいい印象を持てなかった方も少なくないようです。
そこで和室を作るにしろ作らないにしろ、和室についての簡単な知識と、最近はこんな和室もできるということを知って頂くため、私どもの様々な事例を紹介してみようと思います。
先ずは仏壇付きの真壁の和室から。
木造建築では、構造体の柱をそのまま露にする見せる真壁構造と、柱を覆って見せない大壁構造とがあります。半世紀前の庶民の殆どの住宅は真壁構造でした。ここ半世紀で殆どが大壁構造になってきました。さらに和風住宅には大きく貴族社会の頃に発達した「寝殿造り」、武家社会で確立してきた「書院造り」、茶室から発生した「数寄屋造り」の三つのスタイルがあります。一般的和室は書院造を踏襲して構成されています。その辺りの一般的和室については、ネットに色々出ていますので、詳しく知りたいかたは、そちらで調べて頂くとして、ここでは省略します。
ただ、書道の文字に「楷書」「行書」「草書」の三段階の崩し文字があるように、和室の表情にも「真」(楷書)「行」「草」の崩し方があり、それに関連して私どもの和室の話をします。厳密な判断基準があるわけではありませんが、上の和室は真壁構造で長押も本格的なもので、真壁構造の「真」(楷書)の和室になります。
次に、上の和室は大壁構造に付け柱と付鴨居で真壁風にしたもので、楷書ほど堅苦しくなく「行」になるかと思います。この和室は居間に連続する空間となっていて、居間との間の襖を空け放すと和室の床の間が、そのまま居間の空間に方向性と奥を感じさせる効果も狙っています。 設計事例の北上尾の家を参照ください。
若い方も和室でなくてもいいから床仕上げを畳にと、要望される方も少なくありません。
このように今日では様々な和室があり、畳の部屋という言い方が相応しい和室もあります。最後に最初の計画では納戸にするはずの部屋を、多様な使い方ができるように和室にという、設計変更で、急遽和室にしたお部屋を紹介します。