先日現場から次の場所での打ち合わせまで1時間ちょっと時間が空くといことがあった。事務所に帰っても殆ど行き帰りの時間だけで終わりそうだ。こういう時間を忙中閑ありというのだろう。この隙をねらって以前から行こうと思っていた“漆芸界の巨匠 人間国宝、松田権六の世界”展を見に行ってきた。
自分も設計では床の間やカウンター、食卓等に時々拭き漆仕上げを使う。自分でも塗ってみたことも何度かあり、かぶれて皮膚科の先生にしかられたのも1度や2度ではない。お岩さんのような顔になったこともある。それでも何故か漆の魅力には抗し切れないところがある。
建築とまったく違うとはいえ、松田権六という人の工芸作品はそれにしてもすごい。作品の緻密なこと、デザインの構成、色使い、艶、奥深い透明感、ものづくりの執念、何から何まで引き込まれる。さすが人間国宝だ。大学の卒業制作品というのがすでに学生レベルのものではない。その当時での一級品、それまでの技術を越していたものではなかったろうか。国会議事堂の一角の室内装飾まで手がけている。ただただ感心させられた。言葉での説明は無意味でしかない。ここで僕でも特筆出来るとすれば、彼が二千年ほど前の漆塗りの漆器の修復もしていて修復前の漆器もうかがい知れた。二千年経て漆塗りの仕上がりがそれほど朽ちてない。漆塗りそのものの耐用年数のすごさにも改めて感心させられた。
東京展は地下鉄竹橋駅近くの近代美術館別館の工芸館で25日までやっている。お薦めしたい。(藤原)