階段というのは家の中でほぼ唯一目の位置が上下に大きく移動する場所です。設計中にも頭の中と図面でシミュレーションを繰り返し、何がどう見えるかの検討を重ねますが、実際に現場で1段1段上がったり下がったりすると思わぬものが見えてくることもあります。また、光や音の処理についても活かしたり殺したりと様々な可能性があるため、つい複雑な構造に設計してしまうことも少なくありません。最近出来上がった写真の事例は吹き抜けになった階段ホールで、階段下にピアノを置いたり通気窓を取ったりといった状況から、ささら桁の下をなるべく開放する必要がありました。そのために廻り階段部分の桁の組み方がちょっとばかり複雑になってしまい、CADで書くのはさほど難しくないのですが現場で材料を刻んで合わせていく大工さんはちょっとばかり苦労したようです。それでも苦労していただいた甲斐あり、とても明るく使い勝手の良い階段になったと思います。これから尖った部分を落とし、手摺を付けて完成になります。