同じ敷地内に比較的新しいご両親の住まい(母屋)と、築30年の自分たちの住まい(母屋とは別棟)を持っている方が、ご両親が他界され、その家が空き家になったのを機に、自分たちの古い住まいを、全面リフォーム(リノベーション)した別荘です。
ご両親が使用していた母屋に自分らが移り住み、古家を解体する選択肢もありましたが、子供さんが三人おられ、誰かが使う可能性もあり、壊さず残すことにしました。ご両親の住んでいた住まいも十年以上経っていて、間取りと日差しの取り入れ方は今一つだったので、改修で快適な家になるなら、その方がいいということで始まった計画でした。
既存のキッチンは日の射さない北側に、茶の間は西日射す北西の角にありました。そのため「こんな暗い家に一生住み続けるのかと思うと耐えられない」という奥様の思いから始まった計画でしたので、改修後の激変にとても喜んでおられたはずでしたが、改修完成後に点検に訪れたときには、その改修した家に居住されていませんでした。
なぜ住まわれていないのか理由を尋ねると、このまま美しい状態にしておき、来客や娘の里帰り、ご主人の音楽鑑賞など、非日常的なことのために使う方が快適だ、言われました。
まさに近隣別荘そのものの使われ方をされていました。
建築費は自分たちの予算に防衛省の防音工事助成金を活用しています。
(厚木基地周辺に対しての防音工事助成金)
それによって壁全面のボードを剥がして遮音用吸音材という断熱材をいれ、天井にも同様の施しをし、床下も耐震改修費という予算で全面基礎補強を行い、その土間コンクリートに温水パイプを通して基礎蓄熱暖房を追加しました。
古い住まいは南側に、勤めのため日中誰もいない個室があり、キッチンは日の射さない北側に、茶の間は西日射す北西の角にありました。そこで個室を移し、南側窓を大きくとり開放的にし、居間食堂キッチンをワンルームにしました。
キッチンカウンターから居間のソファー越しに南の庭が見える対面式のセンターキッチンにしました。
奥様のお気に入りのガラストップのカウンターにし、洗面脱衣室のそばで、食堂、居間のソファー、テレビ、デッキ、庭、等全てが見渡せる、コントロールセンターのような位置にあります。
古い家の大きな問題は、本の多さにありました。そこで各室に収納量の多いスライド式本棚等を設けたのは言うまでもなく、食堂北側角に書庫を設けました。
さらに南側の収納もスライド式本棚を設けています。
本棚を格納すると、結婚されて子供の生まれた娘さんがたまに帰って来ても困らないようベビーベットを置ける余裕のある空間となります。
古い洗面脱衣室はどうしても雑然としがちでしたので、洗濯機置き場とタオル等の収納庫を別に確保して広くし、窓も古いサッシを活かしつつ鏡で真ん中の框を隠し、すっきりとさせました。
古い浴室は在来工法の防水処理のしていないタイル張りのため、土台も傷んでしまった閉鎖的な浴室でした。それをハーフユニットにし、新たに設けたバスコートに面して窓を大きく取り、腰から上に檜の縁甲板を貼りました。
玄関も狭苦しかったので、靴履き替え用のベンチと収納を設け、広げました。
個室は防音処理のため剥がしたボードの貼り替え仕上げとしてクロスを新しくした程度で、スライド式本棚を設けるなど必要な処置に留めました。
ここまで新しくすると外壁も気になり、居間の外に庇を設け、玄関付近の屋根を修正し、軒も居間の小幅板を延長させた仕上げにし直しました。
庭にも少し手を入れ、窓外にはデッキも設けました。
キッチンは希望のガラストップカウンターしました。
せっかくだから気に入ったソファーを購入され、食堂いすも私どもが以前セミ特注したデザインの椅子にしました。
写真撮影:結設計 加藤
南林間の家リノベーション
所在地 :神奈川県大和市
家族構成 :夫婦、子供3人
構造 :木造2階建て
延床面積 :146.01㎡(44.17坪)
施工 :株式会社 堀井工務店
設計監理 :結設計 藤原・鈴木