木造建築はできない、と思ったほど防火地域のすぐ脇に建つ家です。周りは殆ど鉄骨やコンクリートのビルの建つ都会で、そこにあえて木造で建てようと、10年ほど前から私どもが作る住まいに関心を持ち続けていただいていた方の住まいです。建物は2年ほど前に完成していましたが、コロナ禍で控えていて、今年撮影しました。写真の庭と菜園の木道は完成後の建て主さんの自粛中の労作です。
敷地の南側に3階建ての建物があり、一階は南の日差しは望めないので、リビングは二階にして、その前に大きなデッキを、駐車場を大きく覆うように設けて、車庫を兼ねたエントランストンネルとしました。
上の写真の通り、周りは中高層のビルで、そこに敢えて木造で建てるからには、木造らしさを強調する意味で外壁を左官壁にし、二階デッキの手すり壁は風雨に晒されるので、対候性のあるサイディングにし、ツートンにしました。屋根は見えませんが三州の平瓦を使用しています。
車庫から防火設備の引戸玄関を通って中に入ります。
玄関には飾り台を兼ねたベンチを用意し、下足類はシューズインクローゼットに収納されています。
玄関わきには仏間を兼ねた客室設け、その隣に寝室と水回りを設けています。
二階は小幅板吸音天井を2.7mの高さで水平に張ったリビング・ダイニング・キッチンを南向きに、子供室を北側に配し、お互いの気配が分かるような間取りにしています。
通常の小幅板天井なら、特徴を強調するように勾配天井にするのですが、このような高い水平天井を望まれていたこともあり、住宅のスケール超えた、ボリュームある空間の新たな境地を切り開く機会になりました。
ダイニングキッチンの厨房周りは家族の要望に合わせて、バックカウンター収納も含めて手作りの特注キッチンとしています。
居間の南側には大きなデッキを設けています。正面左の黒い壁は居間の窓ガラスを網入りにしたくないために設けた、梲(うだつ)と同様の効果を狙った防火壁です。
階段の上がり口にオーディオのアンプ等を収納した棚を設けてあり、その扉は、夏場の冷房効率落とさないために階段の降り口を塞ぐ扉でもあります。
手持ちの家具やピアノ等の調度品はともすると、新築の空間に浮いてしまうことがありがちですが、それほど気にならないように納めて頂いたようです。
撮影:加藤義弘
名古屋の家データ
所在地 :愛知県名古屋市
構造規模:木造二階建て
敷地面積:238.38㎡(72.11坪)
建築面積:116.15㎡(35.14坪)
延床面積:186.80㎡(56.51坪)
設計監理:結設計 藤原 ・藁科
施工 :誠和建設株式会社 工事担当 林康広、長縄勝治