人は呪縛の中にいることに気が付かない、と言われます。設計者もその例に漏れないようです。
これまでFSU工法の家を十数棟設計してきましたが、この工法の壁は構造体であり仕上げでもあることから、内部の杉の壁は白木のまま現すか和紙を貼る以外考えたことありませんでした。
しかし城南の家では、建て主さんの要望で白い着色塗装にしました。そうすることで木の持つくどさを消し去ることが出来、これまでなかったFSU工法の表情を獲得出来ました。設計者が白い着色塗装を知らないわけではないのに、これまでそうしようとしなかったのは、やはり呪縛の中に囚われていたようです。
環境負荷削減に少しでも効果があるならと、FSU工法で建てることに賛同いただき、表現のプロでもある建て主さんゆえ、発想できたのだろうと思われます。今回の写真も殆ど建て主さんに提供いただきました。
敷地はメインの南道路から少し奥まったところにあり、その道路方向に住まいからの開放性が確保でき、計画の手がかりになっています。
玄関が一階の動線の、扇の要でそこから、多方面に分岐します。
本棚が全面にある廊下
階段室を二階から見下ろすところに洗面所があり、一階の床下の蓄熱ヒーターの熱が二階に行く通り道にもなっています。
畳敷きの書斎で、足を下せる机と収納が作り付けてあります。
机の前にある明り取りの小窓は、隣家の緑を借景させて頂いています。
階段上がったところは二階の動線の扇の要になっていて、将来用エレベーター前、居間食堂、書斎、それと大きな南面開口部と外部デッキに面しています。
建築技術からすれば、どんな住宅も可能になり、価値観も益々多様になりました。そんな中、建築に対しても自らCO2吸収やリユース等の環境負荷削減に意識を向けて下さる方が出て来る時代にようやくなってきました。城南の家は数年前に完成していて、その先駆けともいえる家です。今後もこのような価値観の方々に選択肢として応えられるよう、FSU工法を磨いていこうと思います。
撮影:結設計 加藤
城南の家データ
所在地 :東京都
家族構成 :夫婦
構造 :木造(FSU工法)2階建て
1階床面積:55.92㎡(16.88坪)
2階床面積:56.30㎡(16.99坪)
延床面積 :112.22㎡(33.88坪)
敷地面積 :119.84㎡(36.18坪)
建ぺい率 :49.42%
容積率 :93.65%
施工 :株式会社ODA建設
造園 :株式会社花伝舎
設計監理 :結設計 藤原・加藤・藁科