石神井公園の家

「石神井公園の家」東側道路からの外観
「石神井公園の家」東側道路からの外観

敷地条件から

敷地は、都内ではよく見かける、元の土地を分割して出来た細長い土地です。間口6m奥行15m程で、南側に私道、東側に公道に接道しています。2方向が道路なので、角地緩和の規定で許容される建蔽率が、50%→60%と10%アップになりました。
(角地緩和は、2方向が道路になっていても、道路形状等の要件で認められないこともあります)

南側に道路があるということは、南側の採光は十分とれるということです。道路上に建物が建つこともないので、将来にわたって採光は問題ないということになります。ただ、2方向が道路に面しているので、道路を行き来している人からの視線をどう防ぐのかというプライバシーの問題は出てきます。

外壁仕上げから隣地境界線まで50cm(民法上の規定)距離を取ろうとすると、必然的に建物の幅は2間半しか取れません。この2間半の建物幅と車を入れる場所の確保、建蔽率と容積率をオーバーしないようにするというのが、建物形状としては難しいところでした。

また、蓄熱冷暖房や外断熱など快適性のための仕様は落とさず、工事費を出来るだけ抑えるように総2階建とし、形状もなるべく凸凹がないようにしました。
これにより、本体工事費や付帯工事、設備機器やロールブラインド・外構工事等々を含めた総工事費で2,350万円(税別)に抑えることができました。※コロナ禍前

総2階建てが比較的安価になるのは、屋根と基礎が延べ床面積の半分で済むことが大きいです。建物形状が凸凹していると、外壁面積が多くなることと、屋根形状が複雑になることで、どうしても工事費が高くなってしまいます。

リビングは1階か2階か

建物から南側隣地境界線までに十分な距離が確保できて、南側に高い建物がない場合は、まず最初に1階リビングが考えられます。距離が取れるということは、庭も十分作れるくらいになるので、庭との近さを考えても1階リビングがその敷地には合っていると思います。

距離取れず隣家も迫ってきている場合は、1階リビングにすると、陽光が取り入れられず暗いリビングになります。中庭を設けることなどで1階にも明るさを取り入れることも可能ですが、敷地の広さ・間口や奥行・建蔽率・容積率などの敷地条件で中庭等が難しい場合があります。

この敷地の間口で建物幅を2間半とると、南側道路から南側外壁までの距離があまりないので、1階リビングにするとプライバシーを確保が難しく、昼間でもカーテン等で閉め切ってしまうことになりかねません。そのため、こういった住宅地の場合は、2階リビングという選択肢が出てきます。
また、建蔽率から建てられる建物の大きさを計算し、駐車スペースも確保しようとすると中庭プランは無理なプランになります。
そうなると必然的に2階リビングが有力となります。

「石神井公園の家」では、2階リビングにすることによって、道路からの目線は遮りプライバシーを確保しつつ、光と風が入る気持ちのいいリビングになっています。

2階リビング

2階のリビング・ダイニング・キッチン
2階のリビング・ダイニング・キッチン

密集した住宅地でさらに角地にある敷地ですが、デッキの腰壁や窓高さ等を工夫することによって、道路からの目線も気にならず、プライバシーが保てています。
駐車スペースの上に大きなデッキがあり、食事したりと屋外空間も楽しめます。このデッキは、建築面積(建蔽率)に入らないように、床をグレーチング敷にしています。

リビングは、最上階にあるため、天井も屋根裏の分を高い天井にすることができ、開放感のあるLDKになっています。

ダイニングからリビング・和室
ダイニングからリビング・和室

奥が和室。襖は全引込みにして壁に隠れています。

和室

「石神井公園の家」和室
2階リビングの隣の和室

リビングに隣にある畳の座敷です。座敷には「真・行・草」のスタイルがありますが、崩した「草」のスタイルになります。リビングの隣にあり、襖を壁の中に収納すればリビングと一体となり広がりが生まれます。

和室は床に座るので、和室の天井の高さはリビング等よりも低めの方が落ち着く空間になります。そのこともあり、和室の天井は低めにして、その上に出来る小屋裏空間に小屋裏収納を設けました。天井に収納する階段を設けていてはしごより上りやすくなっています。

「石神井公園の家」勉強・書斎コーナー
勉強・書斎コーナー

一部畳を掘り下げ足を下せるようにした勉強・書斎コーナー。

キッチン

「石神井公園の家」キッチンからリビング
キッチンからリビング

既製品のキッチンにカウンターと側板を取り付け、キッチンの手元がリビングやダイニング側から見えにくくしています
写真右側にある集中スイッチは、LDKの照明スイッチ、インターホン、給湯リモコン、基礎蓄熱冷暖房リモコンをまとめて設置しています。

1階と基礎蓄熱冷暖房

「石神井公園の家」玄関から階段と廊下 廊下の奥は洗面脱衣室・浴室
玄関から階段と廊下 廊下の奥は洗面脱衣室・浴室

階段下には収納とトイレがあり、階段下のスペースを活用しています。トイレは便器の方向や配置を工夫して、階段下にあっても狭く感じません。

この家では、1階床下の基礎コンクリートに基礎蓄熱冷暖房を入れているのですが、奥様がその蓄熱の設定に対して研究熱心な方で、色々な設定温度や稼働時間を研究されていました。その結果、奥様から言われたのは、「この蓄熱冷暖房は、暖房よりも夏の暑さに対しての冷房機能をおすすめしたい!」ということでした。
暖房効果は、建てる前から想像していたが、冷房は想像以上に効果があったとのことでした。

この敷地は、東京でも夏暑いと言われている練馬なので夏の夜暑くて寝苦しい地域ですが、この基礎蓄熱で冷房をしているとエアコンと違って風がなく、じんわりと涼しく、その結果夜中に暑苦しくて起きるということもなくなり朝までぐっすり寝られるのが素晴らしいと仰っていただきました。

また、1階に浴室の下にも基礎蓄熱冷暖房が入っているので、冬でも浴室が寒くない状態になっており、ヒートショックの心配がありません。

玄関

ドアの両側をFIXガラス窓にして明るい玄関
ドアの両側をFIXガラス窓にして明るい玄関

玄関には、造り付けの下足入を設けています。また、床から天井までの手摺を設けていて、お子さんから大人まで使えて便利です。手すりがあることによって壁に手を付くことが少なくなり壁が汚れにくくなります。

浴室・洗面脱衣室

「石神井公園の家」明るい浴室と洗面脱衣室
明るい浴室と洗面脱衣室

ハーフバスを使った浴室です。浴槽と床はユニットバスと同じで掃除やメンテナンスがし易く、浴槽から上は在来工法と同じになり、壁をタイル貼りにしています。浴室・洗面脱衣室は北西に設けていますが、大きな窓で明るく、洗面脱衣室との間は大きなガラス窓とし、洗面脱衣室にも光が入り明るくなっています。

浴室・洗面脱衣室の床下にも基礎蓄熱暖房を設置しているので、冬でもほかの部屋と同じ温度になり暖かいです。他の部屋との温度差がないことでヒートショックを防げます。

浴室との間に大きなガラス窓があるため、浴室越しに光が入り洗面脱衣室も明るくなっています。洗面台の脇には、壁の厚みを利用してメディシンボックスを設けています。

2階デッキ

「石神井公園の家」デッキ
デッキ

2階LDKの隣にある2階デッキ。この下は駐車スペースになっています。広々として、手すり壁もあり道路からの目線も気になりません。食事もしたり、お子さん用にプールで遊ぶスペースにも使えます。

→「石神井公園の家」工事の様子はブログ記事でも紹介しています。併せてご覧下さい。

撮影:結設計 加藤

石神井公園の家データ

所在地  :東京都練馬区
家族構成 :夫婦、子供2人
構造   :木造2階建て
1階床面積:44.15m2(13.36坪)
2階床面積:44.70m2(13.52坪)
延床面積 :88.85m2(26.88坪)
敷地面積 :90.68m2(27.43坪)
建蔽率  :52.02%
容積率  :97.99%
施工   :株式会社ODA建設
設計監理 :結設計 藤原・加藤