押上の家

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結設計で開発しているDEWS工法による住宅です。建築が廃材の排出や化石燃料の消費等で環境に負担をかける存在でしかない中に、十数年前から、設計行為が環境に資するとすれば、二酸化炭素の固定以外ありえない、という考えに至っていました。
 
木材を貴重材としてではなく、用材として扱い、大量に使用することで二酸化炭素の固定をはかり、森林のケアを生業としている、林業の活性化に貢献する建築の仕方を、設計者の立場から提案しようと、工法の開発をこれまで続けてきました。それで、中断面の集成材を並べて構造壁とし、そのまま内外表しだけで必要性能を確保するという、木材大量使用の工法(FM工法)を開発し、十数棟つくってきました。
 
その工法がある程度の領域まで開発できたと思えた数年前から、その集成材の工法も、30年ほどで解体廃棄され、償却されては、工法提案の意図に反するとういうことが気になりだしました。設計者は、解体廃棄されない住宅を設計できると思い、励んでいますが、今日のように生活が多様化し、年代で生活の仕方が大きく違ってくる昨今、単に構造や性能がいいから誰もが住み続けられるというものではなく、生活の変化に対応できなければ解体されてしまうという実態が、日本の住宅の平均寿命を30年弱としているのではないかと思われます。
 
解体されないと思えるのは設計者の傲慢ではないかという思いも強くなってきました。むしろ建て替えされることは自然なことではないかという気になり、解体されてもその部材を再使用できるような工法が重要ではないかと思い始め、今度はそれができるようにしようと開発してきました。60分の準耐火構造壁の認定や構造評定もあらかた得て、3月にその工法(DEWS工法)で完成した住宅が押上の家でした。このDEWS工法の壁は、準耐火構造の大臣認定をとっていたので、防火地域でも木をあらわしにした住宅にすることが可能でした。
 
面積的に敷地いっぱいに建物を建てる必要があったのと、1階は周りの建物であまり日光が届かないので、庭をつくることが困難でした。そこで建主さんのご要望もあったので、屋上を緑化し庭としました。
 
押上の家の現場の様子は、ブログ記事でも紹介しています。併せてご覧下さい。
 

所在地:東京都墨田区
家族構成:夫婦、子供2人
構造:DEWS工法 2階建て
敷地面積:70.64平米(21.37坪)
延床面積:99.97平米(30.24坪)
施工:山長建設工務
担当:藤原・加藤